ガンジス川にかかる橋を渡るインドの夜行列車
インド

【体験記】デリー⇔バラナシ、インドの夜行寝台列車に乗ってみた

ニューデリーからバラナシまでは、直線距離でおよそ700km。飛行機を使えば1時間半ほどですが、今回はあえて選びませんでした。選んだのは、インド鉄道(Indian Railways)の夜行寝台列車です。

「インドの夜行列車は一度は乗っておいた方がいい」——そんな話をよく耳にしていました。往復ともに寝台列車を使って感じたのは、移動そのものが強烈な旅の記憶になる、ということでした。

01なぜ寝台列車を選んだのか

デリーとバラナシの間は、飛行機を使えば最も早く移動できます。それでも寝台列車を選んだ理由は単純で、「インドの鉄道旅行」そのものを体験してみたかったからです。夜のうちに移動してしまえば宿代も浮きますし、何より車窓から見える景色や、車内で出会う人々との時間は、飛行機では得られないものだと聞いていました。

デリー~バラナシ間や、バラナシ~アグラ間など、北インドの主要都市を結ぶ区間には、夜行の長距離列車が数多く運行されています。往路はデリーからバラナシまで直通の寝台列車で、復路はバラナシからアグラへ、アグラで一泊してタージ・マハルなどを観光したのち、改めてアグラからデリーへと、2本の列車を乗り継ぎました。

02インド鉄道の寝台クラスについて

インド鉄道の座席・寝台クラスは複数に分かれています。主なものを簡単に紹介します。

  • 1AC(AC1等寝台):個室に近い、最上級クラス。
  • 2AC(AC2層寝台):3ACよりベッド数が少なく、カーテンで仕切られるプライバシー重視のクラス。
  • 3AC(AC3層寝台):エアコン付きの寝台で、1区画に3段ベッドが向かい合わせに並ぶ。外国人旅行者に人気の価格帯。
  • 3E(AC3層エコノミー):3ACをベースに、通路側のベッドを2段から3段に増やして割安にした新しいクラス。その分、やや手狭。
  • SL(スリーパークラス):エアコンなしの寝台クラス。最も安価で、窓は開放式。

今回、実際に乗車したのはSL(スリーパークラス)でした。エアコンはなく、天井には年季の入った扇風機が備え付けられていました。

インド鉄道の寝台車内、天井の扇風機とベッド
寝台車内の様子。天井には年季の入った扇風機が備え付けられている。

03乗車までの流れ

ニューデリー駅は、インド有数のターミナル駅だけあって、とにかく人の数がすごい場所でした。ホームには長い車両がずらりと並び、荷物を運ぶポーターや物売りの声、見送りの人々が入り混じって、独特の熱気に包まれています。最初はどれが自分の乗る列車なのか戸惑いましたが、チケットに記載された車両番号を頼りに、駅の電光掲示板やホームの表示で自分の乗る車両の位置を確認しました。

インドの駅のホームに並ぶ列車
ホームにずらりと並ぶ車両。インドの鉄道の規模を実感する光景。

自分の車両を見つけて乗り込むと、ベッドにはあらかじめ番号が振られていて、指定の席にすぐたどり着くことができました。コンセントや鏡まで備え付けられているのを見て、思っていたよりも設備が整っていることに少し驚きました。

寝台番号のプレートとコンセント、鏡
各ベッドに振られた番号プレート。コンセントや鏡も備え付けられている。

インドの鉄道チケットは、外国人でもオンライン予約サイト(IRCTC)から購入可能ですが、登録手続きがやや煩雑です。出発直前は満席になりやすいので、早めの予約をおすすめします。

04車内での一夜、そしてバラナシへ

往路はデリーからバラナシまで直通の寝台列車でした。発車してしばらくすると、車掌が検札に回ってきます。自分の座席のはずの場所に別の乗客が座っていることも珍しくなく、身振り手振りで確認し合う、そんなやり取りも鉄道旅ならではでした。同じ車両に乗り合わせた少年たちが、鉄格子越しの窓から興味津々な笑顔をこちらに向けてくれたのも、忘れられない光景です。車内では、向かいの座席になった、インドを旅行中の西洋人カップルとも言葉を交わしました。こうした偶然の出会いも、寝台列車ならではの楽しみだと思います。車窓の景色は刻々と変わり、やがて真っ暗になります。揺れる車内で眠りにつき、朝になるとまったく違う景色が広がっている——その移り変わりこそが、夜行列車の醍醐味なのだと思います。

車両の出入口から見えるインドの河と橋
車両の出入口から見えた、河を渡る景色。

05アグラ経由でデリーへ、思いがけぬ遅延

復路で乗車したのは「マルダハール・エクスプレス(Marudhar Express)」。バラナシからアグラまで、一晩かけて移動する夜行の寝台列車です。

とはいえ、ここはインド。現実は思い通りにはいきませんでした。この列車は結局10時間以上遅延し、到着は大幅に後ろ倒しに。駅で列車を待つ間、しびれを切らした乗客たちの間には、次第に苛立った空気が漂い始めていました。そんな中、近くにいたラテン系のカップルが素晴らしいファインプレーを見せてくれたのです。男性が弾くウクレレに合わせて女性が歌い始めると、ぴりぴりしかけていた待合室の空気がすっと和らいでいきました。アグラでの観光プランは大きく崩れてしまいましたが、一番の目的だったタージ・マハルだけはなんとか見ることができました。結果的に、復路にアグラという経由地を挟んでいたことで、この遅延の影響はいくらか緩和されました。

アグラでの観光を終えたのち、「パンジャブ・メール(Punjab Mail)」という別の列車に乗り換えて、アグラからデリーへ。こちらは夜行ではなく、昼間に車窓の景色を眺めながらの移動でした。

タージ・マハル入り口付近、赤砂岩の建物と回廊
タージ・マハルの入り口付近。赤砂岩の建物が立ち並ぶ。

06治安・衛生面で気をつけたこと

長時間の夜行列車なので、貴重品の管理には特に気を配りました。貴重品は肌身離さず持つようにしていました。SLクラスは冷房がない分、窓が開いていることも多く、冷房クラスに比べるとより注意が必要だと感じました。

車内販売や停車駅のホームでは、チャイやスナックを売る物売りの声が絶えません。小腹が空いたときはスナックやカレーなどを買って食べましたが、お腹を壊さないように注意が必要です。

体験は2017年当時のものです。チケットの予約方法やオンラインシステムは年々変化しているため、実際に利用される際は最新の情報を確認することをおすすめします。

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Written by N

秘境から定番スポットまで、世界45カ国以上を巡った旅好きライター。現地でしか分からないリアルな情報をお届けします。